紫雄躑躅(ムラサキオンツツジ) 春の花 2011年04月22日 雄躑躅(オンツツジ)はツツジ科ツツジ属の落葉低木ないし小高木である。本州の紀伊半島と四国、九州に分布し、日当たりの良い山地に生える。紫雄躑躅(ムラサキオンツツジ)はその希少種で、紀伊半島に分布する。和名の由来は木の男性的な姿からきており、雌躑躅(メンツツジ)の別名のある藤躑躅(フジツツジ)との対比で命名された。ツツジ属の中では樹高も高く、3~7メートルくらいである。葉は長さ5~8ランチの卵円形で互い違いに生える(互生)が、枝先に3枚が輪生するように見える。開花時期は4~5月である。葉の展開前あるいは展開と同時に開花し、朱赤色ないし濃い紅紫色の花を1~3輪つける。普通の雄躑躅(オンツツジ)の花の色は朱赤色である。花径も5センチほどある大輪である。花冠は漏斗状で先が5つに深く裂ける。裂片の形は楕円形で、上部の裂片の内側には濃い斑が入る。雄しべは10本である。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。属名の Rhododendron はギリシャ語の「rhodon(バラ)+dendron(樹木)」からきている。紅色の花をつける木という意味で名づけられた。種小名の weyrichii は植物採集家「ウェイリッチ(Weyrich)さんの」という意味である。品種名の purpureum は「紫色の」という意味である。写真は4月に小石川植物園で撮った。学名:Rhododendron weyrichii f. purpureum★大輪の色は稀なる紅紫 艶やかにしてダイナミックに今日の花ドットコム花図鑑PR
黐躑躅(モチツツジ) 春の花 2011年04月21日 黐躑躅(モチツツジ)はツツジ科ツツジ属の落葉低木である。日本固有種である。本州の伊豆半島から岡山県にかけての太平洋側と四国に分布し、低山や丘陵地の林の縁などに生える。樹高は1~2メートルくらいである。葉は楕円形で、互い違いに生える(互生)。葉も枝も花も毛深く、触るとねばねばとひっついてくる。和名の由来は、鳥餅のように粘ることからきている。開花時期は4~5月である。葉の展開と同時に花を咲かせる。花径5~6センチくらいの淡い紅紫色をした漏斗状の花をつける。花冠は5つに深く裂け、上部の裂片の内側には濃い紅色の斑が入る。雄しべは5本である。花の後にできる実は長さ1センチくらいのさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。なお、白花のものもあり、白花黐躑躅(シロバナモチツツジ)という。上部の裂片の内側には黄緑色の斑が入る。また、園芸種には、大紫(オオムラサキ)、琉球躑躅(リュウキュウツツジ)、花車(ハナグルマ)などがある。属名の Rhododendron はギリシャ語の「rhodon(バラ)+dendron(樹木)」からきている。紅色の花をつける木という意味で名づけられた。種小名の macrosepalum は「大きな萼のある」という意味である。写真は4月につくば植物園で撮った。学名:Rhododendron macrosepalum★身を護る術は巧みな黐躑躅 絡めとります我が身に代えて今日の花ドットコム花図鑑
清澄三葉躑躅(キヨスミミツバツツジ) 春の花 2011年04月20日 清澄三葉躑躅(キヨスミミツバツツジ)はツツジ科ツツジ属の落葉低木である。本州の関東地方南部から近畿地方南部にかけて太平洋側に分布し、他の植物があまり生えていない岩地に生える。千葉県鴨川市の清澄山で採集された標本を基に昭和5年に命名された。三葉躑躅(ミツバツツジ)の変種とも言われている。樹高は2メートルくらいである。枝先に広い菱形の葉を3枚輪になってつける(輪生)。これが「三葉躑躅」の名の由来である。葉には柄があり、縁にぎざぎざはない(全縁)。開花時期は4~5月である。葉に先立って、濃い紫紅色の花をつける。雌しべが1本、雄しべが10本ある。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。三葉躑躅(ミツバツツジ)と比べると、開花時期が少し遅く、花の色が濃い。また、雄しべの数が三葉躑躅(ミツバツツジ)は5本である。通称を岩躑躅(イワツツジ)という。属名の Rhododendron はギリシャ語の「rhodon(バラ)+dendron(樹木)」からきている。紅色の花をつける木という意味で名づけられた。種小名の kiyosumense は「清澄の」という意味である。写真は4月に神奈川県立フラワーセンター大船植物園で撮った。学名:Rhododendron kiyosumense★清澄の山を真っ赤に染めて咲く 三葉躑躅が春を知らせて今日の花ドットコム花図鑑
丁子莢迷(チョウジガマズミ) 春の花 2011年04月19日 丁子莢迷(チョウジガマズミ)はスイカズラ科ガマズミ属の落葉低木である。本州(中国地方)、四国(香川県)、九州(福岡県)に分布し、海岸の岩場に生える。海外では、朝鮮半島の南部にも分布する。満鮮要素植物の1つである。中国東北部から朝鮮、対馬を経て伝わったが海没によって孤立した植物群である。なお、「迷」の字は正しくはクサカンムリがつくのだが仮に用いている。環境省のレッドリスト(2007)では、「現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては『絶滅危惧』に移行する可能性のある種」である準絶滅危惧(NT)に登録されている。樹高は1~3メートルである。株立ち状になる。樹皮は灰褐色をしている。若い枝には星状毛(放射状に伸びる毛)がある。葉は向かい合って生え(対生)、広い卵形ないし狭い楕円形で、裏面には星状毛がある。開花時期は4~5月である。白ないし淡いピンク色で小さな花を枝先に散房状につける。花冠は直径8~13ミリくらいの漏斗状で、先は5つに裂ける。雄しべは5本である。花はよい香りがする。花の後にできる実は核果(水分を多く含み中に種が1つある)である。属名の Viburnum はこの属1種のラテン古名だが意味はわかっていない。種小名の carlesii は人名に由来する言葉である。変種名の bitchuense は「備中(岡山県)の」という意味である。写真は4月に小石川植物園で撮った。紅葉の写真は12小石川植物園で撮った。学名:Viburnum carlesii var. bitchuense★春の香を運ぶがごとく咲き出づる 丁子莢迷愛らしき花今日の花ドットコム花図鑑
黒船躑躅(クロフネツツジ) 春の花 2011年04月18日 黒船躑躅(クロフネツツジ)はツツジ科ツツジ属の落葉低木である。原産地は朝鮮半島、中国北部、東シベリアなどである。日本へは1668(寛文8)年に朝鮮から渡来した。安土桃山時代から日本に来航する外国船は黒船と呼ばれていた。その黒船で持ち込まれた躑躅というのが名の由来である。現在では日本の各地に分布して山地の林の中に生え、また植栽されている。樹高は2~5メートルくらいである。若い枝には腺毛(粘着物質を出す毛)が密生する。葉は倒卵形で、枝先に5枚ほど集まって輪生状に互い違いに生える(互生)。開花時期は5月である。葉の展開と同時に花を咲かせる。花径は6センチくらいと大きく、花冠は漏斗形で先が5つに裂ける。花の色は淡い紅色で、上部の裂片の内側には赤い斑が入る。雄しべは10本である。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。別名を唐躑躅(カラツツジ)ともいう。属名の Rhododendron はギリシャ語の「rhodon(バラ)+dendron(樹木)」からきている。紅色の花をつける木という意味で名づけられた。種小名の schlippenbachii はロシアの軍人「シュリッペンバッハ(B. A. von Schlippenbach)さんの」という意味である。写真は4月に小石川植物園で撮った。学名:Rhododendron schlippenbachii★女王と呼ばれるほどの大輪を 見事開いて黒船躑躅今日の花ドットコム花図鑑