柊草(ヒイラギソウ) 春の花 2011年05月02日 柊草(ヒイラギソウ)はシソ科キランソウ属の多年草である。日本固有種である。本州の関東地方と中部地方の一部に分布し、山地のやや湿った木陰に生える。 森林伐採や盗掘によって個体数を減らしている。環境省のレッドリスト(2007)では、「IA類ほどではないが、近い将来における絶滅の危険性が高い種」である絶滅危惧IB類(EN)に登録されている。草丈は30~50センチくらいである。葉は卵形で、互い違いに生える(互生)。葉の縁には不揃いで鋭い切れ込みがある。葉の長さは5~10センチくらいあり、葉の柄は長さが3~5センチくらいある。開花時期は4~6月である。花は茎の上部の花の脇に3段から5段の段になってつく。花の色は濃い青紫色である。花は長さが2~3センチの筒形で、先は唇形に裂ける。花の後にできる実は分果(複数の子房からできた果実)で、4つのブロックからなる。和名の由来は、葉の形が柊(ヒイラギ)に似ているところからきている。近縁種に甲斐竜胆(カイジンドウ)がある。属名の Ajuga はギリシャ語の「a(無)+jugos(束縛)」からきている。花冠の形状を表したものである。種小名の incisa は「鋭く裂けた」という意味である。写真は4月に箱根湿生花園で撮った。学名:Ajuga incisa★唇の形の花に似合わない 鋭く切れ込む葉が個性的今日の花ドットコム花図鑑PR
大亀の木(オオカメノキ) 春の花 2011年05月01日 大亀の木(オオカメノキ)はスイカズラ科ガマズミ属の落葉低木である。北方領土を含む北海道から九州にかけて分布し、山地から亜高山にかけて生える。海外では、朝鮮半島やサハリンにも分布する。和名の由来は、卵円形の葉の形を亀の甲羅に見立てたものである。別名を「ムシカリ」ともいう。これは葉に虫がよくつくことからの命名である。樹高は3~4メートルくらいである。樹皮は暗い灰褐色をしている。葉は向かい合って生える(対生)。葉の先は鋭く尖り、縁には重鋸歯(大きなぎざぎざに更に細かなぎざぎざがある)がある。葉の表面は濃い緑色、裏面は淡い緑色をしている。開花時期は4~5月である。葉の展開直後に花が咲く。枝先に散房花序(柄のある花がたくさんつき、下部の花ほど柄が長いので花序の上部がほぼ平らになる)を出し、白い花をたくさんつける。花序の中心には両性花がつき、その周りに花径2~3センチの装飾花をつける。両性花の花びらは5つに分かれ、花径は6~8ミリくらいである。短い雄しべが5本あり、真ん中に雌しべがある。花の時期は短い。花の後にできる実は楕円形の核果(水分を多く含み中に種が1つある)で、赤く熟する。果実酒にすると美味しい。秋には紅葉がきれいである。材は弓や輪かんじきの材料となる。属名の Viburnum はこの属1種のラテン古名だが意味はわかっていない。種小名の furcatum は「フォーク状の」という意味である。花の写真は5月に北大植物園で撮った。実の写真は8月に日光植物園で撮った。学名:Viburnum furcatum★たくさんの赤い実つけて誰招く 大亀の木の葉は個性的今日の花ドットコム花図鑑
黄花の九輪桜(キバナノクリンザクラ) 春の花 2011年04月30日 黄花の九輪桜(キバナノクリンザクラ)はサクラソウ科サクラソウ属の多年草である。原産地はアフリカ北部、地中海沿岸地方、西アジアなどである。草丈は10~20センチくらいである。茎は直立し、毛が生えている。根際からはへら形の葉が数枚生える。葉には柄があり、縁には不規則な切れ込みがある。葉の表面には皺があり、葉のつけ根は狭くなって柄とつながる。開花時期は4~6月である。茎先に総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し、花径2~3センチの黄色い花を数輪横向きにつける。花冠は先で5つに裂け、横に平らに開く。それぞれの裂片の先は浅く2つに裂ける。花の真ん中には橙色の斑がある。萼片は白色を帯び、5枚である。雄しべは5本、雌しべは1本である。花には香りがある。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。花や葉は、去痰や鎮静などの薬効がある。英名はカウスリップ(cowslip)である。これは牧場によく生えていたことからつけられた名前である。学名からきたプリムラ・ベリスの名でも流通している。属名の Primula はラテン語の「primos(最初)」の縮小形である。同属の1種が他に先駆けて早春に花咲くことで名づけられた。種小名の veris は「春の」という意味である。写真は4月に箱根湿生花園で撮った。学名:Primula veris★愛らしい名前もらって嬉しいと 群がりて咲く黄花賑やか今日の花ドットコム花図鑑
黄花碇草(キバナイカリソウ) 春の花 2011年04月29日 黄花碇草(キバナイカリソウ)はメギ科イカリソウ属の多年草である。北海道と東北地方北部、それに近畿地方以北の本州の日本海沿岸に分布し、山地の林の中や林の縁に生える。海外では、朝鮮半島にも分布する。草丈は20~40センチくらいである。葉は2回3出複葉といって、3つに枝分かれした先にそれぞれ3出複葉(1つの葉が3枚の小さな葉に分かれた形)をつける。小葉は大きく、卵形で先が尖り、縁には刺状の毛がたくさんついている。開花時期は4~5月である。花の色は淡い黄色である。茎先に総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出してたくさんの花をつけ、下についた花から開いていく。花びらは4枚、萼片は8枚、雄しべは4本ある。距(花冠のつけ根が後ろに飛び出たもの)は四方に長く伸びる。花の後にできる実は袋果(熟すと果皮が自然に裂けて種子を放出する)である。属名の Epimedium は地名に由来する言葉。イカリソウに転用された。種小名の koreanum は「高麗(朝鮮)の」という意味である。写真は4月に箱根湿生花園で撮った。学名:Epimedium koreanum★ちょっと見は目立たないけど個性的 よくよく見てね不思議な姿今日の花ドットコム花図鑑
三槲(ミツガシワ) 春の花 2011年04月28日 三槲(ミツガシワ)はミツガシワ科ミツガシワ属の多年草である。漢字では「三柏」とも書く。ミツガシワ属には三槲(ミツガシワ)1種のみしか存在しない。いわゆる氷河期の遺存植物の1つと言われている。北方領土を含む北海道から九州にかけて分布し、山地や低地の沼地や湿地に生える。海外では、北半球に広く分布し、「極地周辺植物」といわれるものの1つである。草丈は15~40センチくらいである。葉は3出複葉(1枚の葉が3つの小さな葉に分かれた形)で、互い違いに生える(互生)。葉には長い柄がある。小葉の形は卵形で、縁は波打っている。開花時期は4~5月である。茎先に総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し、花径1センチくらいの小さな白い花を10~20輪くらいつける。花は下から順に咲いていく。花冠は深く5つに裂け、裂片の内側には白い縮れた毛をたくさんつけている。萼片は5枚である。雄しべは5本、雌しべは1本である。株によって、雄しべのほうが長い花を咲かせるものと、雌しべのほうが長い花を咲かせるものがある。長花柱花(雌しべのほうが長い花)が結実する。花の後にできる実は丸いさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)で、黄赤色に熟する。和名の由来は、3枚ある葉の形が「柏の葉」に似ている、あるいは家紋の「三柏」に似ているというところからきている。「丸に三柏」の家紋は山内一豊が用いたものである。葉には苦味成分が含まれ、生薬で睡菜(すいさい)といって江戸時代には健胃薬として用いられたという。別名を水半夏(ミズハンゲ)という。属名の Menyanthes はギリシャ語の「menyein(表現する)+anthos(花)」からきている。花が徐々にひらいていくことから名づけられた。種小名の trifoliata は「三葉の」という意味である。写真は4月につくば植物園で撮った。学名:Menyanthes trifoliata ★古の名残を秘めて三槲 湿原に咲く人里離れ今日の花ドットコム花図鑑