小紫(コムラサキ) 夏の花 2011年06月20日 小紫(コムラサキ)はクマツヅラ科ムラサキシキブ属の落葉低木である。別名を小式部(コシキブ)ともいう。いずれも「紫式部」にちなむ名である。本州の岩手県から沖縄にかけて分布し、山地や湿地に生える。また、庭木ともする。海外では、朝鮮半島や中国にも分布する。園芸的には紫式部の名で流通することもあるが、植物上の紫式部(ムラサキシキブ)は別種である。和名の由来は、秋に小さな紫色の実をつけるところからきている。樹高は2~3メートルである。葉は楕円形で、向かい合って生える(対生)。葉の縁には、先のほうの半分くらいに細かなぎざぎざ(鋸歯)がある。開花時期は6~8月である。葉の脇に集散花序(最初の花が枝先につき、その下に次々と側枝を出して花がつく)を出し、淡い紫色の小さな花をたくさんつける。花は筒状で先が4つに裂けて平らに開く。雄しべは4本、雌しべは1本で、花冠から飛び出る。紫式部(ムラサキシキブ)に比べると、花も実も葉の柄のつけ根から少し離れた位置から出る。花の後にできる実は核果(水分を多く含み中に種が1つある)である。結実期は9~11月である。直径3ミリくらいの紫色の実をつける。実は紫式部(ムラサキシキブ)よりも小振りだが、鞠のように固まってつく。実の色が白いものもあり、白玉小式部(シラタマコシキブ)ないし白実の小紫(シロミノコムラサキ)と呼ばれる。属名の Callicarpa はギリシャ語の「callos(美しい)+carpos(果実)」からきている。実が美しく熟すからことから名づけられたものである。種小名の dichotoma は「二股になった」という意味である。写真は6月に小石川植物園で撮った。実の写真は10月に小石川植物園で撮った。学名:Callicarpa dichotoma★紫の珠と実らんいつの日か 揺れる小花は陽射しを浴びて花図鑑植物図鑑PR
赤升麻(アカショウマ) 夏の花 2011年06月19日 赤升麻(アカショウマ)はユキノシタ科チダケサシ属の多年草である。日本固有種である。本州の東北地方南部から九州にかけて分布し、山地の林の縁などに生える。和名の由来は、根茎の皮が赤いことからきている。草丈は40~80センチくらいである。根際から生える葉は3回3出複葉である。3出複葉は三つ葉のことで、枝分かれを繰り返した先に三つ葉をつけて1枚の葉となる。小葉の形は細長い卵形である。先は尾状に鋭く尖り、縁には重鋸歯(大きなぎざぎざに更に細かなぎざぎざがある)がある。開花時期は5~7月くらいである。茎先に総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し、白い小さな5弁花をたくさんつける。花序はあまり枝分かれをしないこと、下に垂れずに横に広がること、花弁と雄しべが同じくらいの長さであることなどが特徴である。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。属名の Astilbe はギリシャ語の「a(無)+stilbe(光沢)」からきている。この属の1種の葉がヤマブキショウマ属と比べて艶がないということで名づけられた。種小名の thunbergii はスウェーデンの植物学者で日本の植物を研究した「ツンベルクさんの」という意味である。写真は6月に小石川植物園で撮った。学名:Astilbe thunbergii★掘り起こし根っこ調べてみたいけど それも叶わず隔靴掻痒花図鑑植物図鑑
角胡麻(ツノゴマ) 夏の花 2011年06月18日 角胡麻(ツノゴマ)はゴマ科ツノゴマ属の一年草である。分類体系によってはツノゴマ科とされる。原産地は北アメリカの南部からメキシコにかけてである。和名の由来は、角のついた実ができるところからきている。アメリカでは、若い果実はユニコーンに、黒く成熟した果実はデビルクロー(悪魔の爪)にたとえられる。若い果実は中身が肉質で、ピクルスとして食用にされる。熟した果実が絡まりつくと、なかなか取り除くことができない困り者である。草丈は60~100センチくらいである。全体に毛が生え、ネバネバした粘液で被われている。葉は心形で、互い違いに生える(互生)。葉の縁は波打つ。開花時期は5~7月である。茎先に総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し、乳白色ないし淡いピンクの花をつける。花径は5センチくらいある。花冠は筒状で、先が深く5つに裂ける。萼片は5枚である。雄しべは4本で、2本が長い。属名の Proboscidea はゾウの鼻のような形をした果実へのギリシャ名を転用した。種小名の louisiana は「ルイジアナの」という意味である。写真は6月に東京都薬用植物園で撮った。学名:Proboscidea louisiana★怖ろしいデビルクローを隠し持つ 角胡麻の花ただ優しくて花図鑑植物図鑑
夏白菊(ナツシロギク) 夏の花 2011年06月17日 夏白菊(ナツシロギク)はキク科ヨモギギク属の多年草である。原産地は西アジア、バルカン半島である。ヨーロッパや北アメリカに帰化し、野生化している。草丈は30~100センチくらいである。葉は羽状に深く裂け、互い違いに生える(互生)。開花時期は5~7月である。花径1~2センチの菊に似た強い芳香がある白い小花をたくさんつける。花の後にできる実はそう果(熟しても裂開せず、種子は1つで全体が種子のように見えるもの)である。園芸品種には八重咲きや白と黄のポンポン咲きのものなどがある。ハーブとしても利用され、疲労回復などの効果がある。また、駆虫薬としても使用される。別名をマトリカリア(Matricaria)という。これは古い属名に由来する呼称である。属名の Tanacetum はラテン語の「tanazita(不死)」からきている。種小名の parthenium は「処女」という意味である。写真は7月に東京都薬用植物園で撮った。園芸品種は6月に東京都薬用植物園で撮った。学名:Tanacetum parthenium★菊の香を辺り一面漂わせ 夏白菊は煌くように花図鑑植物図鑑
山吹升麻(ヤマブキショウマ) 夏の花 2011年06月16日 山吹升麻(ヤマブキショウマ)はバラ科ヤマブキショウマ属の多年草である。北海道から九州にかけて分布し、山地の林の縁や岩場に生える。海外では、朝鮮半島、中国にも分布する。草丈はは30~90センチくらいである。根茎は木質化をする。葉は2回3出複葉で、互い違いに生える(互生)。3出複葉というのは三つ葉のことで、それがもう1回枝分かれをして1枚の葉となる。したがって、1枚の葉は9枚の小葉で構成される。小葉の形は卵形で、葉脈は平行である。小葉の先は尖り、縁には鋭い重鋸歯(大きなぎざぎざに更に細かなぎざぎざがある)がある。開花時期は6~8月である。雌雄異株である。茎先に複数の総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を円錐状に出し、黄白色の小さなをたくさんつける。花弁は5枚、萼片も5枚である。雄花には花弁より長い雄しべが20本くらいある。雌花には雌しべが3本ある。花の後にできる実は袋果(熟すと果皮が自然に裂けて種子を放出する)で、下を向いており内側に開く。「升麻」というのは生薬の名である。根茎を乾燥させたものは、解毒、解熱、鎮痛などの薬効がある。小葉の形が山吹(ヤマブキ)に似ているというのが和名の由来である。若芽は山菜として食用にされる。属名の Aruncus はラテン語の「aruncus(ヤギのヒゲ)」からきている。種小名の dioicus は「雌雄異株の」という意味である。変種名の tenuifolius は「薄い葉の」という意味である。写真は6月に北大植物園で撮った。学名:Aruncus dioicus var. tenuifolius★かっこよくぴんと伸ばした白い髭 風に揺らして山吹升麻花図鑑植物図鑑