狸の剃刀(タヌキノカミソリ) 秋の花 2011年09月05日 狸の剃刀(タヌキノカミソリ)はヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草である。原産地は中国である。湖北省から雲南省にかけて分布している。日本には自生していないが、観賞用として導入されている。面白い名前だが、狐の剃刀(キツネノカミソリ)を意識したネーミングなのであろう。草丈は50~60センチくらいである。開花時期は8~9月である。淡いピンク色の花被片に、濃いピンクの縦ラインが入っている。花の咲くころには葉は枯れている。結実はしない。属名の Lycoris はギリシャ神話の海の女神「リコリス(Lycoris)」の名からきている。花の美しさを称えて名づけられた。種小名の incarnata は「肉色の」という意味である。写真は8月につくば植物園で撮った。学名:Lycoris incarnata★美しく咲いているのにどことなく 気配怪しい狸の剃刀花図鑑植物図鑑PR
岩沙参(イワシャジン) 秋の花 2011年09月03日 岩沙参(イワシャジン)はキキョウ科ツリガネニンジン属の多年草である。日本固有種で、フォッサマグナ要素の植物である。本州の関東地方から中部地方にかけて分布し、山地の湿った岩場に生える。草丈は30~70センチくらいである。根際から生える葉は卵形である。茎につく葉は細い披針形で、互い違いに生える(互生)。葉の縁には鈍いぎざぎざ(鋸歯)がある。開花時期は9~10月である。鐘形をした紫色の花が多数垂れ下がる。花冠の先は浅く5つに裂ける。花径は15ミリから25ミリくらいである。萼片は5枚、雄しべは5本である。花の色は白いものもある。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。沙参(シャジン)というのは釣鐘人参(ツリガネニンジン)のことである。和名の由来は、岩場に生える釣鐘人参(ツリガネニンジン)の仲間というところからきている。属名の Adenophora はギリシャ語の「adenos(腺)+phoreo(有する)」からきている。植物体全体に乳液を出す腺細胞があることから名づけられた。種小名の takedae は高山植物の研究家「武田久吉さんの」という意味である。写真は10月に芦ノ湖野草園で撮った。学名:Adenophora takedae★ひっそりと俯きながら花つける 岩沙参は日本の生まれ花図鑑植物図鑑
高薊(タカアザミ) 秋の花 2011年08月30日 高薊(タカアザミ)はキク科アザミ属の越年草である。北海道から本州の長野県にかけて分布し、河原や休耕田などに生える。海外では、朝鮮半島、中国東北部、ウスリー地方、アムール地方などにも分布する。草丈は1~2メートルくらいである。根際から生える葉は開花時期には枯れる。茎につく葉は細長い楕円形で、互い違いに生える(互生)。葉は羽状に深く裂け、頂裂片は尾状に伸びる。開花時期は8~10月である。長い柄の先に花径25~35ミリくらいの紅紫色の花(頭花)を下向きにぶら下がるようにつける。総苞の形は卵状の球形である。総苞片は線形で、反り返る。花の後にできる実はそう果(熟しても裂開せず、種子は1つで全体が種子のように見えるもの)である。和名の由来は、花の柄が高く伸び上がっていることからきている。属名の Cirsium はギリシャ語の「cirsos(静脈腫)」からきている。静脈腫に薬効のある植物につけられた名が転用された。種小名の pendulum は「下垂の」という意味である。写真は9月に小石川植物園で撮った。学名:Cirsium pendulum★ぐいぐいと精一杯に背伸びして 花はだらりと垂れ下がらせて花図鑑植物図鑑
岩菖蒲(イワショウブ) 秋の花 2011年08月29日 岩菖蒲(イワショウブ)はユリ科チシマゼキショウ属の多年草である。本州の日本海側に分布し、山地や亜高山帯の湿地に生える。日本固有種である。氷河期の遺存植物と言われる。草丈は20~50センチくらいである。茎には腺毛(粘着物質を出す毛)がたくさんあって粘る。葉は線形で根際から生え、長さ10~20センチくらいである。菖蒲(ショウブ)の葉に似ており、それが和名の由来となっている。開花時期は8~9月である。茎先に花径5~10ミリくらいの白い花がたくさん固まってつく。花は1か所に3つずつつく。花被片は6枚である。花被片の形は細長い楕円形で、内側に巻く。花の真ん中にある緑色のものは雌しべの根元である。雄しべは6本である。花の後にできる実は楕円形のさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。属名の Tofieldia はイギリスの植物学者「トゥフィールド(T. Tofield)さん」の名からきている。種小名の japonica は「日本の」という意味である。写真は8月に仙台市野草園で撮った。学名:Tofieldia japonica★太古より生き抜き深山に花咲かす 岩菖蒲の可憐な姿花図鑑植物図鑑
釣船草(ツリフネソウ) 秋の花 2011年08月27日 釣船草(ツリフネソウ)はツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草である。日本各地に分布し、山地の水辺ややや湿った場所に生える。海外では、朝鮮半島、中国東北部にも分布する。草丈は50~80センチくらいである。葉は楕円形で、互い違いに生える(互生)。葉の縁には細かいぎざぎざ(鋸歯)がある。開花時期は8~10月くらいである。葉の脇から花柄を出し、紅紫色の花を数輪ずつつける。花冠は長さが3~4センチの筒状で先が唇形に裂ける。また、距(花冠のつけ根が後ろに飛び出たもの)が後ろに突き出て渦巻き状になる。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。花柄から下垂する花の形を釣船に見立てたのが名の由来である。俳句の季語は秋である。属名の Impatiens はラテン語の「impa(否定)+tient(忍耐)」からきている。「我慢できない」という意味で、さく果にさわると急に弾けることから名づけられた。種小名の textorii は採集家「テックストルの」という意味である。写真は8月に山形市野草園で撮った。学名:Impatiens textori★のんびりと棹を垂らして釣船草 派手な衣装で人目気にせず花図鑑植物図鑑