夏椿(ナツツバキ) 夏の花 2011年07月28日 夏椿(ナツツバキ)はツバキ科ナツツバキ属の落葉高木である。本州の宮城県から九州にかけて分布し、山地に生える。また、寺の敷地内に沙羅双樹(サラソウジュ)として植えられることが多い。仏教では釈迦が沙羅双樹の下で涅槃に入ったとされている。日本では夏椿(ナツツバキ)がこの沙羅双樹(サラソウジュ)と誤認されたという。海外では、朝鮮半島の南部にも分布する。樹高は5メートルから15メートルくらいである。樹皮は紅色を帯びており、平滑である。葉は楕円形で、互い違いに生える(互生)。開花時期は6月から7月である。葉の脇に花径5センチから6センチの白い花をつける。花弁は5枚である。花弁には皺があり、外側の1枚は緑色を帯びる。雄しべはたくさんあり、花糸は黄色い。花は一日花で、咲いた後は花の形そのままで木の下に落ちる。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。別名を沙羅樹(シャラノキ)という。俳句では「沙羅の花」が夏の季語である。属名の Stewartia はイギリスのビュート侯「ジョン・スチュワート(John Stuart)」の名からきている。種小名の pseudo-camellia は「ツバキ属に似た」という意味である。写真は6月に川口市立グリーンセンターで撮った。紅葉の写真は11月に川口市立グリーンセンターで撮った。学名:Stewartia pseudo-camellia★一日の命なればと白き肌 風にそよがせ夏椿咲く花図鑑植物図鑑PR
裏白七竈(ウラジロナナカマド) 夏の花 2011年07月27日 裏白七竈(ウラジロナナカマド)はバラ科ナナカマド属の落葉低木である。日本固有種である。北海道から本州の中部地方にかけて分布し、亜高山や高山の林の縁や谷筋などに生える。樹高は1~2メートルである。よく枝分かれをして横に広がる。葉は奇数羽状複葉(鳥の羽のように左右に小葉がいくつか並び、先に1つの小葉がついて1枚の葉が構成される)で、互い違いに生える(互生)。小葉は4~6対くらいつく。小葉の形は披針形(笹の葉のような形)で、上部の縁には鋭いぎざぎざ(鋸歯)がある。頂小葉より側小葉のほうが大きい。葉の裏面は白っぽく、それが名の由来にもなっている。開花時期は6~8月である。枝先に散房花序(柄のある花がたくさんつき、下部の花ほど柄が長いので花序の上部がほぼ平らになる)を上向きに出し、花径1センチくらいの白い小さな花をたくさんつける。花弁は5枚で、花弁の形は倒卵形である。萼片は5枚で、茶褐色の軟毛が生える。雄しべは20本である。花の後にできる実は楕円形の偽果(子房以外の部分が加わってできている果実)で上向きにつき、赤く熟する。属名の Sorbus はこの属の植物の古いラテン名からきている。種小名の matsumurana は植物分類学者「松村任三さんの」という意味である。写真は7月に八幡平で撮った実の写真は7月に北大植物園で撮った。学名:Sorbus matsumurana★どれどれと葉っぱの裏を覗き込む 花の様子も少し違うぞ花図鑑植物図鑑
岩鏡(イワカガミ) 夏の花 2011年07月26日 岩鏡(イワカガミ)はイワウメ科イワカガミ属の多年草である。日本固有種である。北海道から九州にかけて分布し、亜高山、高山の岩場や草地などに生える。草丈は10~20センチくらいである。葉には長い柄があり、根際から生える。葉の形は卵円形で、表面には艶がある。これが和名の由来でもある。開花時期は4~7月である。茎先に総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し、3~10輪の花を横向きにつける。花の色は淡い紅色から白まで変異がある。花径は10~15ミリくらいで、鐘状をしている。花冠は5つに分かれ、その先は更に細かく裂けている。雄しべは5本で、真ん中に紅色の雌しべの柱頭が1本ある。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。属名の Schizocodon はギリシャ語の「scizein(裂ける)+kodon(鐘)」に由来する。鐘形の花冠は縁が細かく切れ込んでいることから名づけられた。種小名の soldanelloides は「Soldanella(イワカガミダマシ属)+oides(のような)」で、イワカガミダマシ属に似たという意味である。写真は7月に八幡平で撮った。学名:Schizocodon soldanelloides★ちりちりと裂けたピンクが可愛いよ 深山の似合う岩鏡の花花図鑑植物図鑑
赤物(アカモノ) 夏の花 2011年07月25日 赤物(アカモノ)はツツジ科シラタマノキ属の常緑小低木である。日本固有種である。北海道から四国にかけて分布し、山地から高山の礫地や草地に生える。別名を岩櫨(イワハゼ)ともいう。樹高は10~30センチくらいである。葉は広卵形で、互い違いに生える(互生)。革質で先はやや尖り、縁には小さなぎざぎざ(鋸歯)があって先は長い毛となる。開花時期は5~7月である。花の脇から短い花柄を出し、先端に白い鐘形の花を下向きにつける。花冠は先が5つに裂ける。萼は赤く、毛が密生する。花柄には小さな苞葉があり、赤褐色の長い毛がたくさん生える。秋には赤い楕円形の実を上向きにつける。実は偽果(子房以外の部分が加わってできている果実)で、食用になる。和名の由来は、「赤桃」の転訛したものといわれる。属名の Gaultheria はカナダの自然科学者「ゴーティエ(J. F. Gaulthier)さん」の名からきている。種小名の ovatifolia は「卵円形の葉の」という意味である。亜種名の adenothrix は「腺毛のある」という意味である。写真は7月に八幡平で撮った。実の写真は8月に信州大学の自然教育園で撮った。学名:Gaultheria ovatifolia subsp. adenothrix★岩櫨の花に初めて出合ったよ 八幡平はいま花盛り花図鑑植物図鑑
紅花(ベニバナ) 夏の花 2011年07月24日 紅花(ベニバナ)はキク科ベニバナ属の越年草である。原産地はアラビアないしエジプト付近と考えられている。日本へは奈良時代にシルクロ-ドを経て渡来し、末摘花(スエツムハナ)と呼ばれた。「末摘花」は源氏物語に登場する女性の名にもある。草丈は1メートルくらいである。葉は幅の広い披針形で、互い違いに生える(互生)。葉の質は硬くて先は尖り、縁には棘がある。開花時期は6~8月である。茎先につく花は、大きな総苞片(花序全体を包む葉の変形したもの)のあるアザミに似た頭花で、筒状花だけからなる。花の色は最初は黄色で、後に紅色に変わる。花の後にできる実はそう果(熟しても裂開せず、種子は1つで全体が種子のように見えるもの)である。日本では江戸時代までは高級染料として盛んに栽培されたが、化学染料の出現によって栽培は衰退した。現在は山形県などで試作されている程度である。種子からリノール酸を含む良質の油が採れるので、今では食用油としての需要が多く、アメリカなどから輸入されている。英名はサッフラワ-(safflower)である。山形県の県花になっている。俳句では「紅の花」が夏の季語である。属名の Carthamus はアラビア語の「quartom(染める)」からきている。紅花(ベニバナ)から紅を採ることから名づけられた。種小名の tinctorius は「染色用の」という意味である。写真は8月に山形市野草園で撮った。学名:Carthamus tinctorius★お待たせとやっと目覚めて咲き初めし 紅花愉し色づき待てば花図鑑植物図鑑