実葛(サネカズラ) 果実・野菜 2010年12月18日 実葛(サネカズラ)はマツブサ科サネカズラ属の蔓性常緑低木である。本州の東北地方南部から九州にかけて分布し、山地の林の中や林の縁に生える。また、庭木や盆栽とされる。海外では、朝鮮半島、台湾、中国などにも分布する。蔓性だが絡みつくというよりは垂れる感じになる。葉は長めの楕円形で艶があり、互い違いに生える(互生)。葉の先はやや尖り、縁には粗いぎざぎざ(鋸歯)がある。葉の裏面は赤味を帯びることが多い。開花時期は7月から8月である。雌雄異株である。葉の脇から柄を出して、釣鐘形をした黄白色の小さな花をつける。雄花の中には赤い雄しべが、雌花の中には緑色の雌しべが、それぞれたくさんあって螺旋状に集まる。実は球状の小さな液果(果皮が肉質で液汁が多い実)の集合果で、10月から12月ころ赤く熟する。名の由来は、「実(さね)」が美しい「葛(蔓性の植物)」というところからきている。小倉百人一首など多くの和歌に詠まれている。別名を美男葛(ビナンカズラ)ともいう。これは、枝の皮に含まれる粘液を水に混ぜ、整髪料として用いたことに由来する。実を乾燥させたものを生薬で南五味子(なんごみし)といい、滋養強壮、鎮咳などの薬効がある。俳句の季語は秋である。実の写真は12月に向島百花園で撮った。花の写真は9月に川口市立グリーンセンターで撮った。学名:Kadsura japonica★ギヤマンのグラス思わす実葛 毒杯たれど我も呷(あお)らん今日の花ドットコム花図鑑PR
アメリカ浜車(アメリカハマグルマ) 四季咲きの花 2010年12月17日 アメリカ浜車(アメリカハマグルマ)はキク科ハマグルマ属の蔓性多年草である。フロリダ州の南部から中央アメリカにかけて分布する。属名のウェデリア(Wedelia)の名も使われている。沖縄では植栽されていたものが野生化している。また、日本には近縁種の熊野菊(クマノギク)が自生する。草丈は15センチから25センチくらいである。茎が地面を這い、茎の節から根を出してマット状に広がる。広がりは2、3メートルに及ぶ。葉は卵形で、先が3つに裂ける。葉の両端の裂片の先は鋭く尖り、大きなぎざぎざ(鋸歯)がある。葉の表面は濃い緑色で艶がある。開花時期は6月から10月である。暖地では周年開花をする。茎先に花径2、3センチの黄色い花(頭花)をつける。別名を三葉浜車(ミツバハマグルマ)という。国際自然保護連合(IUCN)の「種の保存委員会」(SSC)では、「世界の外来侵入種ワースト100」に指定している。写真は9月に大阪市大植物園で撮った。学名:Wedelia trilobata★花園の隅でひっそり咲いている ウェデリアの花じっと見詰めて今日の花ドットコム花図鑑
寒蘭(カンラン) 冬の花 2010年12月16日 寒蘭(カンラン)はラン科シュンラン属(シンビジウム属)の常緑多年草である。本州の静岡県から沖縄にかけて分布し、広葉樹林の林の中に生える地生種である。しかし、愛好家による乱獲によって絶滅状態に近いという。環境省のレッドデータリスト(2007)では、「ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種」である絶滅危惧IA類(CR)に登録されている。海外では、台湾や中国にも分布する。草丈は40センチから60センチくらいである。茎は細くて硬い。線形の葉を数枚つける。葉の表面には艶があり、やや反り返って伸びる。開花時期は11月から1月である。茎先に総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し、数個の花をつける。花径は5センチから7センチくらいで、よい香りがする。花は3枚の萼片と3枚の花弁からなる。萼片は細く、3方に開く。花弁のうち2枚は細長く、先が尖る。色は淡い緑色で、紫色を帯びるものもある。もう1枚を唇弁といい、普通は黄白色に赤紫色の斑点が入る。写真は12月につくば植物園で撮った。学名:Cymbidium kanran★幻の花とするまい寒蘭を 人の性(さが)とは悲しけれども今日の花ドットコム花図鑑
徳利木綿(トックリキワタ) 秋の花 2010年12月14日 徳利木綿(トックリキワタ)はパンヤ科(キワタ科)トックリキワタ属の落葉高木である。原産地はボリビア、ブラジル、アルゼンチンである。別名を酔いどれの木(ヨイドレノキ)という。これはスペイン語の「パロ・ボラーチョ」=palo(木)borracho(酔った)を和訳したものだという。沖縄にも戦後に導入され、公園樹として人気がある。樹高は10メートルから20メートルである。幹の真ん中あたりが太くて徳利状になる。幹には角のような大きな棘がある。葉は手のひら状の複葉で、小葉は5枚から9枚である。開花時期は9月から12月である。枝先に花径10センチから20センチくらいある鮮やかなピンクの花をつける。花びらは5枚で、先のほうがピンクになり、真ん中は白い。10センチくらいある長くて白い花柱が目立つ。白花のものもある。花の後には緑色をした紡錘形の実がつき、黒く熟する。中の種子には長い繊維質の白い毛がついている。この白い毛は枕や座布団の綿として使われる。また、材は下駄や漆器に用いられる。写真は11月に本部町の熱帯・亜熱帯都市緑化植物園で撮った。3枚目は9月に大阪市の咲くやこの花館で撮った。学名:Chorisia speciosa★この木にもきれいな花が咲くのかと 驚き見つめる徳利木綿今日の花ドットコム花図鑑
蛸の木(タコノキ) 果実・野菜 2010年12月13日 蛸の木(タコノキ)はタコノキ科タコノキ属の常緑小高木である。タコノキ属はアジア、アフリカ、太平洋諸島、オーストラリアなどに分布し、650種くらいある。本種は小笠原諸島特産である。学名の boninensis には「小笠原の」という意味がある。環境省のレッドデータブック(2000)では、「現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては『絶滅危惧』に移行する可能性のある種」である準絶滅危惧(NT)に登録されていた。環境省のレッドデータリスト(2007)では削除されている。樹高は5メートルから10メートルくらいである。根元に気根(空気中に伸びる根)が垂れるのが特徴である。それが蛸の足のように見えるというのが名の由来でもある。葉は肉厚で、細長い剣状である。葉の縁には鋭い棘状のぎざぎざ(鋸歯)がある。開花時期は5月から6月である。雌雄異株である。花序は肉穂花序(花軸が多肉化して花が表面に密生したもの)である。雄花は黄白色で、雌花は緑色である。花の後にできる実はパイナップルのような集合果で、10月ころに赤黄色に熟する。実は食べられる。別名を小笠原蛸の木(オガサワラタコノキ)という。写真は12月に沖縄県本部町の熱帯・亜熱帯都市緑化植物園で撮った。学名:Pandanus boninensis★足元がとてもミラクル蛸の木は ねじれよじれて踏ん張りながら今日の花ドットコム花図鑑