坪菫(ツボスミレ) 春の花 2011年04月09日 坪菫(ツボスミレ)はスミレ科スミレ属の多年草である。南西諸島を除く日本全国に分布し、高原地帯の湿原のほとりや湿った草原、平地の丘、道端などに生える。海外では、朝鮮半島、中国大陸、サハリン、アムール地方などにも分布する。草丈は5センチから25センチくらいである。有茎種である。葉は丸みを帯びた心形である。葉のつけ根にある托葉に切れ込みがある。茎ははじめのうちは立っていないが、次第に立ち上がってくる。花期は3月から5月くらいである。1センチほどの小さな白い花をつける。壷型をした唇弁の中心部に紅紫色の筋模様があるのが特徴である。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。名前の「坪」は庭の意味である。別名を如意菫(ニョイスミレ)と言う。これは僧侶が持つ如意棒のことである。長く伸びてカーブする花茎を如意棒にたとえたものである。俳句の季語は春である。属名の Viola はラテン語の「viola(菫)」からきている。種小名の verecunda は「内気な」という意味である。写真は4月につくば植物園で撮った。学名:Viola verecunda★誘われて覗いて見れば坪菫 小人になってしばし戯れ☆坪菫涙のかけら落としては 今日の笑顔に変えて輝き今日の花ドットコム花図鑑PR
針金雀枝(ハリエニシダ) 春の花 2011年04月08日 針金雀枝(ハリエニシダ)はマメ科ハリエニシダ属の落葉低木である。原産地は南西ヨーロッパである。西ヨーロッパからイタリアにかけて分布している。石の多い土地や乾燥した牧草地に生え、観賞用や飼料用として栽培される。ヨーロッパのゴルフ場に植えてあるのをよく見かける。樹高は60~200センチくらいである。幹は綿毛で覆われており、そこから小枝を横に伸ばす。葉は棘状になるが、幼葉には3小葉があり柔らかい。開花時期は3~5月である。棘の多い葉が密集した枝の先に、蝶形をした黄色い小さな花をつける。花弁も毛で覆われている。花の後にできる実は豆果(莢の中に種子が入るもの)である。属名の Ulex はラテン語の古名「ulex(棘のある常緑の低木)」からきている。種小名の europaeus は「ヨーロッパの」という意味である。写真は3月に小石川植物園で撮った。学名:Ulex europaeus★少しだけ離れて見てね痛いから 針金雀枝は気を遣いつつ今日の花ドットコム花図鑑
フォザギラ・マヨール 春の花 2011年04月07日 フォザギラ・マヨールはマンサク科シロバナマンサク属の落葉低木である。原産地は北アメリカである。和名を白花満作(シロバナマンサク)という。樹高は1~2メートルくらいである。葉は幅の広い楕円形で、互い違いに生える(互生)。葉の先は丸く、縁には鈍いぎざぎざ(鋸歯)がある。開花時期は4月くらいである。葉の展開と同時に花を咲かせる。花弁の色は白く、糸状である。「白いブラシ」のように見える。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。秋には紅葉をする。属名の Fothergilla はイギリスの植物収集家「フォザギル(J. Fothergill)さん」の名からきている。種小名の major は「巨大な」という意味である。写真は4月に箱根湿生花園で撮った。学名:Fothergilla major★マヨールはこれか違いはどこにある 調べてみようと増える楽しみ今日の花ドットコム花図鑑
四手辛夷(シデコブシ) 春の花 2011年04月06日 四手辛夷(シデコブシ)はモクレン科モクレン属の落葉低木である。日本の固有種である。本州の愛知県、岐阜県、三重県にのみ分布し、湿原の周辺や渓流沿いなどに生える。このような分布をする植物を「周伊勢湾要素植物」と呼んでいる。「生きている化石」とも言われる貴重な植物である。環境省のレッドリスト(2007)では、「現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては『絶滅危惧』に移行する可能性のある種」である準絶滅危惧(NT)に登録されている。樹皮は灰褐色で、やや皮目(ひもく=樹皮にあって空気を通す部分)がある。若い枝や葉の柄には軟毛が密生する。葉は長い楕円形で、互い違いに生える(互生)。葉の先は丸く、つけ根の部分はくさび形である。開花時期は3~4月である。葉の展開に先立って花を咲かせる。花の色は白ないし淡い紅色で、花径は7~12センチくらいある。細長いリボン状の花びら(花被片)を12~18枚外向きにつける。「四手」というのは「玉串や注連縄(しめなわ)などに下げる紙」のことである。花の様子を見立てたものである。別名を姫辛夷(ヒメコブシ)ともいう。花の後にできる実は袋果(熟すと果皮が自然に裂けて種子を放出する)の集合果である。属名の Magnolia はフランスの植物学者「マニョル(P. Magnol)さん」の名にちなむ。種小名の tomentosa は「密に細かな綿毛のある」という意味である。花の写真は3月に埼玉県立花と緑の振興センターで撮った。実の写真は8月につくば植物園で撮った。学名:Magnolia tomentosa★不思議なる姿かたちの四手辛夷 太古のロマン今に伝えて今日の花ドットコム花図鑑
雪柳(ユキヤナギ) 春の花 2011年04月05日 雪柳(ユキヤナギ)はバラ科シモツケ属の落葉低木である。本州の関東地方から九州にかけて分布し、川岸や岩礫地に生える。また、庭木とされる。海外では、中国にも分布する。樹高は1~2メートルである。葉は披針形(笹の葉のような形)で、互い違いに生える(互生)。葉の先は尖り、縁にはぎざぎざ(鋸歯)がある。開花時期は3、4月である。株元からたくさん枝を出し、花径1センチに満たない白い小さな5弁花を穂のようにつける。花の後にできる実は袋果(熟すと果皮が自然に裂けて種子を放出する)である。和名の由来は、花の様子が雪のように見え、枝や葉の形が柳のような形に見えることからきている。 花が散ると地面に小米(砕いた米)をまいたようになるので小米柳(コゴメヤナギ)とも呼ばれる。古来は、この花が岩のあるところを好んで生えるので、岩柳(イワヤナギ)と呼ばれていたという。また、中国では「噴雪花」と呼ばれている。なお、同じシモツケ属で花が団子状のものを小手鞠(コデマリ)という。開花は雪柳(ユキヤナギ)よりも少し遅い。花の形はよく似ている。俳句の季語は春である。属名の Spiraea はギリシャ語の「speira(螺旋)」に由来する。果実が螺旋状になるものがあることから名づけられた。種小名の thunbergii はスウェーデンの植物学者で日本の植物を研究した「ツンベルクさんの」という意味である。写真は4月に埼玉県三郷市で撮った。学名:Spiraea thunbergii★するすると枝を伸ばして雪柳 真白の花びらまぶすが如く☆遠くより真白の雲のあるごとく 風に舞い散る雪柳見ゆ今日の花ドットコム花図鑑