黄菫(キスミレ) 春の花 2011年04月24日 黄菫(キスミレ)はスミレ科スミレ属の多年草である。本州の山梨県から九州にかけて太平洋側に分布し、低山の草原に生える。富士山周辺と阿蘇山周辺に比較的多く見られる。大陸系のスミレで、中国や朝鮮半島にも分布する。環境省のレッドデータブック(2000)では、「絶滅の危険が増大している種」である絶滅危惧II類(VU)に登録されていた。レッドリスト(2007)で指定から外れた。草丈は5~15センチくらいである。有茎種で茎は直立する。葉は心円形で、上部に3~4枚をつける。葉の縁には波状のぎざぎざ(鋸歯)がある。開花時期は3~5月である。茎につく葉の脇から花柄を出し、花径2センチ前後の黄色い花をつける。唇弁と側弁に褐色の筋がある。距(花冠のつけ根が後ろに飛び出たもの)はきわめて短い。稀に八重咲きのものもある。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。属名の Viola はラテン語の「viola(菫)」からきている。種小名の orientalis は「東方の(中近東の)」という意味である。写真は4月につくば植物園で撮った。学名:Viola orientalis★阿蘇の春彩り咲くか黄菫は 眩しい草地夢に描いて今日の花ドットコム花図鑑PR
鬼小葉の莢迷(オニコバノガマズミ) 春の花 2011年04月23日 鬼小葉の莢迷(オニコバノガマズミ)はスイカズラ科ガマズミ属の落葉低木である。「迷」の字は正しくはクサカンムリがつく。白山木(ハクサンボク:Viburnum japonicum)と莢迷(ガマズミ:Viburnum dilatatum)との交雑種である。九州の北部で発見された。葉は卵形で、向かい合って生える(対生)。葉の先は尖り、縁には粗いぎざぎざ(鋸歯)がある。開花時期は4~5月である。枝先に散房花序(柄のある花がたくさんつき、下部の花ほど柄が長いので花序の上部がほぼ平らになる)を出し、白い小さな花をたくさんつける。花冠は先が5つに裂ける。花の後にできる実は楕円形で、秋には真っ赤に熟する。属名の Viburnum はこの属1種のラテン古名だが意味はわかっていない。種小名の kiusiana は「九州の」という意味である。花の写真は4月につくば植物園で撮った。実の写真は10月につくば植物園で撮った。学名:Viburnum x kiusiana★めずらしい花を見るならここがいい 調べる楽しみ後に控えて今日の花ドットコム花図鑑
紫雄躑躅(ムラサキオンツツジ) 春の花 2011年04月22日 雄躑躅(オンツツジ)はツツジ科ツツジ属の落葉低木ないし小高木である。本州の紀伊半島と四国、九州に分布し、日当たりの良い山地に生える。紫雄躑躅(ムラサキオンツツジ)はその希少種で、紀伊半島に分布する。和名の由来は木の男性的な姿からきており、雌躑躅(メンツツジ)の別名のある藤躑躅(フジツツジ)との対比で命名された。ツツジ属の中では樹高も高く、3~7メートルくらいである。葉は長さ5~8ランチの卵円形で互い違いに生える(互生)が、枝先に3枚が輪生するように見える。開花時期は4~5月である。葉の展開前あるいは展開と同時に開花し、朱赤色ないし濃い紅紫色の花を1~3輪つける。普通の雄躑躅(オンツツジ)の花の色は朱赤色である。花径も5センチほどある大輪である。花冠は漏斗状で先が5つに深く裂ける。裂片の形は楕円形で、上部の裂片の内側には濃い斑が入る。雄しべは10本である。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。属名の Rhododendron はギリシャ語の「rhodon(バラ)+dendron(樹木)」からきている。紅色の花をつける木という意味で名づけられた。種小名の weyrichii は植物採集家「ウェイリッチ(Weyrich)さんの」という意味である。品種名の purpureum は「紫色の」という意味である。写真は4月に小石川植物園で撮った。学名:Rhododendron weyrichii f. purpureum★大輪の色は稀なる紅紫 艶やかにしてダイナミックに今日の花ドットコム花図鑑
黐躑躅(モチツツジ) 春の花 2011年04月21日 黐躑躅(モチツツジ)はツツジ科ツツジ属の落葉低木である。日本固有種である。本州の伊豆半島から岡山県にかけての太平洋側と四国に分布し、低山や丘陵地の林の縁などに生える。樹高は1~2メートルくらいである。葉は楕円形で、互い違いに生える(互生)。葉も枝も花も毛深く、触るとねばねばとひっついてくる。和名の由来は、鳥餅のように粘ることからきている。開花時期は4~5月である。葉の展開と同時に花を咲かせる。花径5~6センチくらいの淡い紅紫色をした漏斗状の花をつける。花冠は5つに深く裂け、上部の裂片の内側には濃い紅色の斑が入る。雄しべは5本である。花の後にできる実は長さ1センチくらいのさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。なお、白花のものもあり、白花黐躑躅(シロバナモチツツジ)という。上部の裂片の内側には黄緑色の斑が入る。また、園芸種には、大紫(オオムラサキ)、琉球躑躅(リュウキュウツツジ)、花車(ハナグルマ)などがある。属名の Rhododendron はギリシャ語の「rhodon(バラ)+dendron(樹木)」からきている。紅色の花をつける木という意味で名づけられた。種小名の macrosepalum は「大きな萼のある」という意味である。写真は4月につくば植物園で撮った。学名:Rhododendron macrosepalum★身を護る術は巧みな黐躑躅 絡めとります我が身に代えて今日の花ドットコム花図鑑
清澄三葉躑躅(キヨスミミツバツツジ) 春の花 2011年04月20日 清澄三葉躑躅(キヨスミミツバツツジ)はツツジ科ツツジ属の落葉低木である。本州の関東地方南部から近畿地方南部にかけて太平洋側に分布し、他の植物があまり生えていない岩地に生える。千葉県鴨川市の清澄山で採集された標本を基に昭和5年に命名された。三葉躑躅(ミツバツツジ)の変種とも言われている。樹高は2メートルくらいである。枝先に広い菱形の葉を3枚輪になってつける(輪生)。これが「三葉躑躅」の名の由来である。葉には柄があり、縁にぎざぎざはない(全縁)。開花時期は4~5月である。葉に先立って、濃い紫紅色の花をつける。雌しべが1本、雄しべが10本ある。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。三葉躑躅(ミツバツツジ)と比べると、開花時期が少し遅く、花の色が濃い。また、雄しべの数が三葉躑躅(ミツバツツジ)は5本である。通称を岩躑躅(イワツツジ)という。属名の Rhododendron はギリシャ語の「rhodon(バラ)+dendron(樹木)」からきている。紅色の花をつける木という意味で名づけられた。種小名の kiyosumense は「清澄の」という意味である。写真は4月に神奈川県立フラワーセンター大船植物園で撮った。学名:Rhododendron kiyosumense★清澄の山を真っ赤に染めて咲く 三葉躑躅が春を知らせて今日の花ドットコム花図鑑