三葉風露(ミツバフウロ) 夏の花 2011年08月20日 三葉風露(ミツバフウロ)はフウロソウ科フウロソウ属の多年草である。北海道から九州にかけて分布し、山地の草地や林の縁などに生える。海外では、朝鮮半島、中国、アムール地方などにも分布する。現の証拠(ゲンノショウコ)に似るが、葉が3つに裂けるものが多いこと、開出毛(立ち上がるようにつく毛)や腺毛(粘着物質を出す毛)がないことが異なる。草丈は30センチから80センチくらいである。葉は手のひら状で、普通は3つに裂ける。葉の裂片は菱形状で、先が尖る。茎や葉の柄には下向きの伏毛(茎や葉に密着して寝た毛)がある。開花時期は7月から10月である。茎先や葉の脇に花径10ミリから15ミリくらいの白ないし淡い紅色の花をつける。花弁数は5枚で、濃い色の筋が入る。萼片は5枚である。雄しべは10本ある。花柱(雌しべの一部で柱頭と子房とをつなぐ部分)は先が5つに裂ける。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。属名の Geranium はギリシャ語の「geranos(鶴)」に由来する。長いくちばしのような果実を鶴のくちばしにたとえたものである。種小名の wilfordii は東アジアの植物を採集したイギリスの植物学者「ウィルフォード(C. Wilford)さんの」という意味である。写真は8月に伊吹山で撮った。学名:Geranium wilfordii★葉の形たしかに違っているけれど 見分けにくいね三葉風露は花図鑑植物図鑑PR
日光薊(ニッコウアザミ) 夏の花 2011年08月19日 日光薊(ニッコウアザミ)はキク科アザミ属の多年草である。日本固有種である。本州の関東北部から中部地方にかけて分布し、山地の湿った草原に生える。野原薊(ノハラアザミ)の亜種で、総苞や茎に白い毛が多いのが特徴である。草丈は40~100センチくらいである。根際から生える葉は、羽状に深く裂ける。茎につく葉は茎を抱く。開花時期は8~9月である。茎の上部で枝分かれをし、それぞれの先に紅紫色をした頭花を上向きにつける。花の後にできる実はそう果(熟しても裂開せず、種子は1つで全体が種子のように見えるもの)である。よく似た野薊(ノアザミ)は花のすぐ下にある総苞が粘るが、日光薊(ニッコウアザミ)は粘らない。属名の Cirsium はギリシャ語の「cirsos(静脈腫)」からきている。静脈腫に薬効のある植物につけられた名が転用された。種小名の oligophyllum は「少数の葉の」という意味である。亜種名の nikkoense は「日光の」という意味である。写真は8月に奥日光の小田代原で撮った。学名:Cirsium oligophyllum subsp. nikkoense★湿原を彩るように咲くという 日光薊をじっと見つめて花図鑑植物図鑑
巴草(トモエソウ) 夏の花 2011年08月18日 巴草(トモエソウ)はオトギリソウ科オトギリソウ属の多年草である。北海道から九州にかけて分布し、山地の草原などに生える。海外では、朝鮮半島、中国の東北部、シベリアにも分布する。草丈は50~130センチくらいである。茎の断面は四角形である。葉は披針形で向かい合って生える(対生)。葉のつけ根の部分は茎を抱く。開花時期は7~8月である。茎先に花径5センチくらいの黄色の五弁花を開く。雄しべはたくさんあり、雌しべの先は5つに裂ける。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。和名の由来は、花弁が巴状(卍のような形)にねじれて咲いているところからきている。属名の Hypericum はギリシャ語の「hypo(下に)+ erice(草むら)」ないし「hyper(上に) + eikon(像)」に由来する。種小名の ascyron はオトギリソウのギリシャ名である。写真は8月に奥日光の小田代原で撮った。学名:Hypericum ascyron★黄の花のねじれ不思議な巴草 空を翔けるやスクリュー巻いて花図鑑植物図鑑
大姥百合(オオウバユリ) 夏の花 2011年08月17日 大姥百合(オオウバユリ)はユリ科ウバユリ属の多年草である。北方領土を含む北海道から本州の中部地方にかけて分布し、山地のやや湿った林の中や草地に生える。海外では、サハリンにも分布する。近縁種の姥百合(ウバユリ)よりも大形で、花序につく花の数も多い。草丈は150~200センチくらいになる。葉の形は円形ないし心形である。葉は根際から生え、茎に下部にも少しつく。葉には長い柄があり、先は丸くつけ根の部分は心形である。開花時期は7~8月である。クリーム色をした長さ10~15センチの花が、10~20輪くらいつく。花のつき方は総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)で、下のほうから順に咲く。花びら(花被片)は内側と外側に3枚ずつあり、茎に対して直角につく。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。和名の由来は、花の咲く時期に葉が枯れているのを「歯がない=姥」にかけたものである。かつてアイヌの人びとはこの鱗茎からでんぷんを取って貴重な保存食にしたという。芽生えてから花が咲くようになるまで数年かかり、一回咲くと鱗茎は枯れる。属名の Cardiocrinum はギリシャ語の「cardia(心臓)+crinon(ユリ)」からきている。花はユリに似ているが葉は特徴のある心臓形であることから名づけられた。種小名の cordatum「心臓形の」という意味である。変種名の glehnii はサハリンの植物採集家「グレーンさんの」という意味である。写真は8月に奥日光で撮った。学名:Cardiocrinum cordatum var. glehnii★にょっきりと花茎立てて咲き出る 大姥百合はわが道を行き花図鑑植物図鑑
山芥子(ヤマガラシ) 夏の花 2011年08月16日 山芥子(ヤマガラシ)はアブラナ科ヤマガラシ属の多年草である。北海道から本州の中部地方にかけて分布し、山地や高山の湿った礫地や草地に生える。海外では、中国東北部、シベリア、北アメリカなどにも分布する。別名を深山芥子(ミヤマガラシ)という。草丈は20~60センチくらいである。高い山に生えるものは背丈も低い。茎は群がって生える。根際から生える葉は羽状に裂ける。側裂片は小さいが、頂裂片は楕円形で大きい。茎につく葉は長い楕円形で、つけ根の部分は茎を抱く。開花時期は5~8月である。茎先に総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し、黄色い小さな花を10~20個くらいまとまってつける。4弁花で、花径は5~7ミリくらいと小さい。花の後にできる実は角果(雌しべの中にある仕切りを残して左右の殻がはがれるもの)である。なお、若菜は山菜とされる。属名の Barbarea はキリスト教の女聖者とされる「聖バルバラ(St. Barbara)」の名からきている。種小名の orthoceras は「直立した角の」という意味である。写真は7月に中央アルプスの千畳敷カールで撮った。学名:Barbarea orthoceras★花びらは小さいけれど山芥子 ぴりっと咲いて怖じ気を見せず花図鑑植物図鑑