白山沙参(ハクサンシャジン) 夏の花 2011年08月28日 白山沙参(ハクサンシャジン)はキキョウ科ツリガネニンジン属の多年草である。日本固有種である。北海道から本州の中部地方にかけて分布し、高山や亜高山の草地や礫地に生える。分類上は釣鐘人参(ツリガネニンジン)の高山型の変種とされている。和名の由来は、最初の発見地である白山の名を冠したものである。別名を高嶺釣鐘人参(タカネツリガネニンジン)ともいう。草丈は20~60センチくらいである。葉は披針形で、3~5枚が輪生する。葉の縁には尖ったぎざぎざ(鋸歯)がある。下部につく葉は開花時期には枯れる。よく似た姫沙参(ヒメシャジン)や深山沙参(ミヤマシャジン)の葉は互い違いに生える(互生)。開花時期は7~8月である。花は淡い青紫色をした鐘形で、数輪ずつ輪生する。花の色は濃いものや薄いものがある。花冠の先はやや広がり、雌しべの花柱が長く突き出る。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。属名の Adenophora はギリシャ語の「adenos(腺)+phoreo(有する)」からきている。植物体全体に乳液を出す腺細胞があることから名づけられた。種小名の tripylla は「3枚の葉の」という意味である。変種名の hakusanensis は「(石川県の)白山の」という意味である。写真は8月に山形市植物園で撮った。学名:Adenophora triphylla var. hakusanensis★花時は終わりに近いようだけど 出合いの縁に歓び覚え花図鑑植物図鑑PR
釣船草(ツリフネソウ) 秋の花 2011年08月27日 釣船草(ツリフネソウ)はツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草である。日本各地に分布し、山地の水辺ややや湿った場所に生える。海外では、朝鮮半島、中国東北部にも分布する。草丈は50~80センチくらいである。葉は楕円形で、互い違いに生える(互生)。葉の縁には細かいぎざぎざ(鋸歯)がある。開花時期は8~10月くらいである。葉の脇から花柄を出し、紅紫色の花を数輪ずつつける。花冠は長さが3~4センチの筒状で先が唇形に裂ける。また、距(花冠のつけ根が後ろに飛び出たもの)が後ろに突き出て渦巻き状になる。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。花柄から下垂する花の形を釣船に見立てたのが名の由来である。俳句の季語は秋である。属名の Impatiens はラテン語の「impa(否定)+tient(忍耐)」からきている。「我慢できない」という意味で、さく果にさわると急に弾けることから名づけられた。種小名の textorii は採集家「テックストルの」という意味である。写真は8月に山形市野草園で撮った。学名:Impatiens textori★のんびりと棹を垂らして釣船草 派手な衣装で人目気にせず花図鑑植物図鑑
羽前鳥兜(ウゼントリカブト) 秋の花 2011年08月26日 羽前鳥兜(ウゼントリカブト)はキンポウゲ科トリカブト属の多年草である。日本固有種である。「羽前」というのは山形県の旧国名である。蔵王山の山形県側で発見されたのが名の由来である。本州の東北地方と関東地方に分布する。秋田県では絶滅危惧種に指定している。奥鳥兜(オクトリカブト)とよく似ているが、花の柄に腺毛が生えることで区別される。草丈は50~180センチくらいになる。葉は5つから7つに裂けるが、細長い裂片には分かれず丸味がある。裂片の縁には粗いぎざぎざ(鋸歯)があり、重鋸歯(大きなぎざぎざに更に細かなぎざぎざがある)である。開花時期は8~10月である。濃い青紫色の花を咲かせる。花びらのように見えるのは萼である。萼の中に細長い花弁が2枚ある。たくさんの雄しべが見える。花の後にできる実は袋果(熟すと果皮が自然に裂けて種子を放出する)である。属名の Aconitum はギリシャ語の「hierax(=鷹)」からきている。鷹がこの属の植物で目を洗うと考えられたことから名づけられた。種小名の okuyamae は「奥山さんの」という意味である。写真は8月に山形市野草園で撮った。学名:Aconitum okuyamae★峰連ね雪待つ山に花開く 羽前の国に固有の姿花図鑑植物図鑑
小伊吹薊(コイブキアザミ) 秋の花 2011年08月22日 小伊吹薊(コイブキアザミ)はキク科アザミ属の多年草である。伊吹山の固有種である。山頂に近いお花畑に生える。環境省のレッドリスト(2007)では、「絶滅の危険が増大している種」である絶滅危惧II類(VU)に登録されている。草丈は40センチから100センチくらいである。葉は長い楕円形で、羽状に裂ける。葉には鋭い棘があり、茎に密集する。開花時期は8月から10月である。茎先に淡い紅紫色をした花(頭花)を密につける。花径は2センチくらいである。総苞は筒状で、蜘蛛毛(蜘蛛の巣のような細くからまっている毛)があり粘る。花の後にできる実はそう果(熟しても裂開せず、種子は1つで全体が種子のように見えるもの)である。属名の Cirsium はギリシャ語の「cirsos(静脈腫)」からきている。静脈腫に薬効のある植物につけられた名が転用された。種小名の confertissimum は「密生した」という意味である。写真は8月に伊吹山で撮った。学名:Cirsium confertissimum ★この土地がとても似合いの咲き方に 惚れ惚れとする小伊吹薊花図鑑植物図鑑
四手沙参(シデシャジン) 夏の花 2011年08月21日 四手沙参(シデシャジン)はキキョウ科シデシャジン属の多年草である。本州と九州に分布し、山地に生える。海外では、朝鮮半島、中国東北部などにも分布する。草丈は50~100センチくらいである。葉は長い卵形で、互い違いに生える(互生)。葉の先は尖り、縁には不規則なぎざぎざ(鋸歯)がある。開花時期は6~8月である。茎先や葉の脇から総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し、青紫色の花をつける。花冠は長さ2センチくらいで、細く5つに裂けて反り返る。雄しべは5本である。雌しべの花柱が長く突き出し、柱頭が3つに裂ける。花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。「四手」というのは「玉串や注連縄(しめなわ)などに下げる紙」のことである。「沙参」は釣鐘人参(ツリガネニンジン)の中国名である。青紫色の花が後ろに反り返った独特の形から四手(シデ)を連想したものといわれる。属名の Asyneuma はギリシャ語の「a(否定)+syn(共に)+aeuma(Phyteuma属の略)」からきている。タマシャジン属とは異なったという意味になる。種小名の japonicum は「日本の」という意味である。写真は8月に日光植物園で撮った。学名:Asyneuma japonicum★造形の不思議を見せる花姿 四手沙参咲く野は深くして